評価制度がなくてもできる——小さな会社の「月1回15分面談」の始め方
「日常の会話はあるのに、仕事の話を改まってする場がない」「辞めた若手に、送別の席で『もっと相談したかった』と言われた」——従業員数が少ない会社ほど、意外とこうした声を耳にします。毎日顔を合わせているからこそ、「わざわざ面談なんて」と思ってしまいがちですが、雑談と、腰を据えて話を聴く場は別のものです。
とはいえ、人事の専門知識や評価制度がないと面談はできない、というわけではありません。この記事では、月1回15分から始められる面談(1on1)のやり方を、準備・当日・その後の3つのステップでご紹介します。
なぜ「改まって聴く場」が定着につながるのか
従業員が退職を決めるとき、その理由が事前に経営者へ伝わっていないことは珍しくありません。不満や不安は、日常の立ち話では出てきにくいものです。忙しそうな社長に、仕事の悩みやキャリアの相談を自分から切り出せる従業員は多くありません。
定期的な面談には、一般的に次のような効果が期待できると言われています。
- 不満や困りごとが小さいうちに見つかる(退職を考える前に対処できる可能性)
- 「気にかけてもらえている」という実感が生まれる
- 本人の得意・やりたいことが分かり、仕事の任せ方に活かせる
ポイントは、評価や査定の場ではなく、本人のための時間として設計することです。人数が少ない会社なら、全員と月1回話しても大きな負担にはなりません。むしろ少人数だからこそ、一人ひとりに時間を割ける強みがあります。
月1回15分面談の3ステップ
ステップ1:始める前の準備
準備といっても、用意するものはわずかです。
- 趣旨を先に伝える:「評価のためではなく、困りごとや考えていることを聴く時間にしたい」と全員に説明する。突然呼び出すと「何か注意されるのでは」と身構えられてしまいます
- 日時を固定する:「毎月第1週の火曜、○○さんは14時から」のように決めてしまう。都度調整すると、忙しさに流されて消滅しがちです
- 場所を選ぶ:他の従業員に会話が聞こえない場所。事務所の一角でも、時間をずらせば十分です
- 聴くことを3つだけ決めておく:例「最近の仕事で気になっていること」「やりにくいと感じていること」「今後やってみたいこと」
立派な面談シートは不要です。メモ用紙に3つの質問を書いておく程度で始められます。
ステップ2:当日は「聴く8割・話す2割」
当日いちばん大切なのは、経営者が話しすぎないことです。目安は「聴く8割・話す2割」。次の流れを意識してみてください。
- 雑談から入る(2〜3分):天気や趣味の話で構いません。いきなり本題に入らない
- 決めておいた質問を投げ、黙って待つ:沈黙が続いても、先回りして答えを言わない。考えている時間です
- 出てきた話を遮らず、まず受け止める:「なるほど、そう感じていたんだね」と一度受け止めてから、事実を確認する
- その場で解決しようとしない:「持ち帰って考える」「次回までに確認する」で構いません
注意したいのは、面談が説教や業務指示の場に変わってしまうことです。伝えたいことがある場合も、この場では聴くことを優先し、指導は別の機会に分けるほうが、話してもらえる関係を保ちやすくなります。
ステップ3:終わった後のひと手間
面談は「やりっぱなし」にすると効果が薄れます。終わったら5分だけ、次のことをメモしておきます。
- 出てきた困りごと・要望(例:工具が古くて作業しづらい、休憩室が使いにくい)
- 本人がやってみたいと言ったこと
- 次回までに自分が確認・対応すること
そして、小さなことでよいので1つ実行することが重要です。「先月言っていた件、こう変えてみたよ」という一言が、「話せば変わる」という信頼につながります。逆に、聴くだけ聴いて何も変わらないと、面談は形骸化していきます。
続かなくなる落とし穴と対処
面談が続かなくなる典型的なパターンと対処も知っておくと安心です。
- 忙しくて延期が続く → 15分に短くしてでも「飛ばさない」ことを優先。延期するときは必ず代替日をその場で決める
- 話すことがなくなる → 質問を入れ替える(「お客様から言われて嬉しかったこと」「自分の仕事で変えたいこと」など)。話題がない月は雑談だけでも可
- 本音が出てこない → 最初の数回はそれが普通です。「話しても大丈夫」という実感は回数で育ちます。出てきた話を他の従業員に漏らさないことも大前提です
なお、面談で拾った課題の中には、待遇や職場環境、業務の仕組みなど、経営判断が必要なものも出てきます。千葉県内でも人材の定着は多くの中小企業に共通するテーマであり、拾った課題をどう優先順位づけするかは、外部の視点も借りながら整理する方法があります。
面談で見えてきた課題、次の一手に迷ったら。
従業員の声をどう職場改善につなげるか、公的な無料の経営相談窓口で一緒に整理することができます。「こんな要望が出たが、どこまで応えるべきか」といった個別の悩みも、状況に合わせて検討できます。聴きっぱなしにしない仕組みづくりに、外部の力も活用してみてください。
まとめ
従業員の定着には、不満や不安が小さいうちに気づける「改まって聴く場」が役立つと考えられます。評価制度がなくても、月1回15分・質問3つ・聴く8割という形で、面談は今月から始められます。
大切なのは、続けること、そして聴いた内容を小さくても1つ実行に移すことです。完璧な運用を目指す必要はありません。まずは一人、日時を決めて声をかけるところから始めてみてください。



